マルニ木工の木について
マルニコレクションは日本を代表する木工家具メーカーの一つであるマルニ木工が作り上げたデザイナーズ家具ブランドです。
世界的なデザイナーと共に日本から発信しており、国際的なプロダクトデザイナーである深澤直人、ジャスパー・モリソン、そしてセシリエ・マンツが開発パートナーとして参加しています。
その代表作とも言えるHIROSHIMAシリーズを始め、世界的にも評価の高い家具を作ってきました、それを作り上げてきた職人も然り、今回は木材についてご案内したいと思います。
木工会社にとって木を見極めることの大切さ
マルニ木工の家具に使われる木材は、すべて信頼のおけるサプライヤーから板材として供給されたものを使用しています。
入荷した木材は、まずは品質検査を行います。木材加工で大切なのは、適切な水分量かどうかで、それを含水率(8 ~ 11%)で表します。その含水率が、安定していると狂いの少ないモノづくりが可能となります。
次にこの板材を、加工に適切なサイズに切り揃えていきます。サイズが揃っていることはもちろんですが、家具のどの部分に使うか、さらに木目や色、欠点を見極めながら行います。
この時点で、すでに塗装完成後の木目や色をイメージして行うことは、より美しく家具を仕上げるための大切な作業です。一つとして同じものがない木材と向き合うこの作業には、削りや磨き、塗装加工と同じように職人的な資質が求められています。
天然の木材だからこそ出る節や巻皮
マルニ木工で生産する家具の素材は、天然の木材です。
天然の木材は一つとして同じものが無く、一点一点異なります。その木目に出る節や巻皮などは全て、その木が生きてきた証で、天然素材を使用する上での魅力の一つです。
自然が作り出した木の特徴の一部をご紹介します。
斑(ふ)点模様のような木目が特徴的なのがビーチ材です。斑(ふ)は、木材によってさまざまな表情をみせます。 |
虎斑(とらふ)虎の模様のように入る斑の一種です。養分をたっぷりと含んだ部分に現れる木目で、上質な材料の証でもあります。オーク材に見られる木目です。 |
節(ふし)枝が生えてきた跡で、木が年輪を積み重ねて成長していく過程で、枝が幹の中に包み込まれて作られます。どの木材でも現れる特徴の一つです。 |
色むら材にまばらに入ったシミのような跡です。木が成長する過程で変色菌や有色性鉱物などを吸収し、部分的に色が変わることで発生します。主にオーク材に現れる特徴の一つです。 |
白太樹皮に近い幹の外周部の材料です。中心部の色と比較すると白味が強く、「辺材」や「白肌」とも呼ばれます。特にウォルナットは白太がはっきりと表れ、様々な色味がまじりあった美しいグラデーションを描きます。 |
カナスジ幹の導管に沿って入る黒い筋状の線です。成長過程で地中の鉱物を吸い上げた際の、ミネラル成分が変色してできます。 |
入皮成長の過程で樹皮が傷つくことがあり、その傷を巻き込むようにして成長した箇所が、茶色くスジとなったものです。 |
木目の経年変化を存分に楽しむことができる無垢材
マルニコレクションで使われている木材には、無垢材と突板があります。
「無垢材」とは、その言葉の通り加工をしていない木材のことです。木を切り出した板をそのまま使用しています。
木は育ってきた環境や年月により木目の出方は1つ1つ違います。人間でいえば指紋のようなもので、全く同じものはありません。美しい木目との出会いも無垢材の楽しみのひとつで、また使いこむほどに風合いが増し味わい深くなっていきますので経年変化を楽しむこともできます。また傷や汚れがついても、削り直しなどの補修が可能です。
修理やメンテナンスを丁寧におこなうことによって、世代を超えて受け継ぎながら長く家具をお使いいただくことができます。
一方で突板とは木材を薄くスライスしたもので、芯材と呼ばれるベースとなる木材に突板を貼り付けて表面を美しく仕上げたものが突板の家具と呼ばれます。
薄くスライスすることで、反りにくくなります。
突板は無垢材と比べて木目を合わせやすいので、イメージに近い見た目で量産が可能になります。また突板は一般的に、木材の美しい部分を優先的に使用するといわれています。
突板を選択することでデザイナーの意図する木目を貼ることが可能になり、木目をデザインとして生かすこともできます。ここが無垢材との大きな違いになります。突板は加工しやすく、模様張りなどの装飾に向いているのが大きなメリットです。
マルニ木工では技術やデザインのみならず、木材へのこだわりも伝わってきます。
特に「HIROSHIMA」シリーズは、木に対する日本的な美意識やそれを生活文化の中で生かしてきた技術を反映させ、無塗装に近い自然な木肌の仕上げを用いています。
木の見立てから始まる、家具づくり
マルニコレクションを作り上げる工程の中に「木取り」という工程があります。
「木取り」とは、製品の完成形をイメージして板材から大雑把に部品を切り出す工程の事です。デザインは既にこの工程から始まっていると言っても過言ではありません。HIROSHIMAアームチェアの場合、顔になる部分は肘から背もたれにかけての「もたれ組み」と呼ばれる部分ですが、ここにマルニならではのこだわりがあります。
木本来の色ではなく着色をするのであれば、木目などは気にする必要はなく、もっとシンプルです。しかしHIROSHIMAアームチェアはクリアな塗装が多いため、木目や木の質感などが品質に大きく影響します。そのため材料は同じ種類の木であれば何でも良いという訳ではなく、可能な限り左右の肘や背もたれの木目が対称になる様に、材料を選別しています。この材料選別は簡単そうに見えて実は熟練した職人の経験、カン、センスなどが求められます。板材を加工する前に、加工した後の木目を予測しないといけないからです!決して数値化できないこうしたノウハウは何十年も家具を作り続け、代々受け継がれてきたマルニのこだわりであり、簡単には真似できない強みでもあります。
人は無意識に左右の木目が違いすぎると違和感を覚えます。マルニ木工の家具は永く愛着を持ってご使用いただくために、木の木目すらデザインをしています。
木は天然素材であり、同じ木でも同じ木目は一つとしてありません。そんな素材を工業製品として量産化することは矛盾と葛藤の連続ですが、そこに面白さや醍醐味があります。
まとめ
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